A longitudinal perspective on learning strategies in higher education:
Different viewpoints towards development

Vermetten, Y. J., Vermunt, J. D., & Lodewijks, H. G.
British Journal of Educational Psychology, 69(1999), 221-242


【問題・目的】
・ 大学教育の中で学生たちはいかに学習方略を発達させていくか?
・ また,それに関わる要因は何か?
・ 以上の問題を,2時点の縦断的データを用いて研究する

☆ 学習方略について
・ Vermunt(1996, 1998)によるILS(Inventory of Learning Style):Cognitive Processing ActivitiesとMetacognitive Regulation Activities
・ Cognitive Processing:一種の認知的方略…既有知識活用,構造化,リハーサルなど
・ Metacognitive Regulation:プラニングや外的資源の活用など

・学習方略の使用には2つの要因:Personological DomainとContextual Domain

★ Personological Domain
・ Vermunt(1996, 1998)によるILS(Inventory of Learning Style):Learning OrientationとMental Learning Models
・ Learning Orientation:個人の動機づけや目標・意図などを包括する.職業のための目標や,個人的興味など
・ Mental Learning Models:学習に関する概念,考え方.認識論的信念やviz. conceptions of learning(Marton, Da..'Alba & Beaty, 1993)などと重なる部分もあるが,もう少し広い概念.
・ ILSではLearning OrientationとMental Learning ModelがStrategyに影響を与える⇒Learning OrientationとMental Learning Modelはよりstableな変数.

☆ Contextual Domain
・ 学年があがるにつれて,学生に情報を統合させるような教育環境になっていくという先行研究
・ 教育環境を変えることによって,学生たちの学習行動なども変わってくるだろう
・ よって本研究では質問紙によってPerceived Instructional Activitiesを測定する

★ 学習の発達に関する諸理論
・ Perry(1970)のモデルは認識論的信念の発達としてよく引用される.これは本研究のMental Learning Modelの発達に対応するであろう
・ Model of Domain Learning(MDL)というものもある.これは領域固有の「知識」「興味」「方略使用」がお互いに相互関連しながら発達していくというモデルである.一種の多次元的なモデルとも言える.最後にはこれらはより1つの次元へと収束していくと仮定される.
・ ILSの4つの領域をすべてまとめて因子分析した研究で,Vermunt(1998)はこの4つの領域を越えた4つの因子を見出し,これをLearning Styleと名づけた.それぞれundirected, reproduction-directed, meaning-directed, application-directedである.この領域間のつながりの強さは,先行研究を見る限り,学年があがるにつれて強くなるようである.

・ 以上の研究から,以下の2つの発達に仮説を立てる
・ development hypothesis:発達につれて,因子構造が1つに収束していく
・ context hypothesis:発達は,教育環境の影響を受けて変わってくる

☆ 本研究の目的
・ 尺度ごとに個人内の成長の差を見る
・ それらの要因を探る
・ また,各尺度の一貫性の観点から,どの尺度が流動的でどの尺度が固定的かを調べる
・ 2時点での因子構造の変化の違いを通して,学習に対する概念の変化を多次元的に捉える
・ これらの違いは,developmental hypothesis,context hypothesisそれぞれのどのような観点から説明できるかを探る.

【方法】
☆ 被験者
・ Tiburg University(法学・経済学・社会科学・言語文化)の学生
・ 1学期末と3学期(2年の1学期)末の2時点のデータを使用(実際は4時点とっている).両方に記入してくれた被験者の数は276名(男性40%/女性60%).ドロップアウト率などは学部によって違うが,約6割程度⇒結果の外的妥当性には慎重になる必要性.

★ 実験材料
・ Learning Strategies:ILS(Inventory of Learning Styles)の1部を使用…Cognitive Processing25項目,Regulation25項目.
・ Personological Domain:ILSの1部を使用…Mental Learning Model25項目,Learning Orientations25項目.
・ Contextual Domain:IPIA(Inventory of Perceived Instructional Activities)25項目.
・ それぞれのSubscaleに関しては別紙参照.
・ 一般的に訊ねるのではなく,Semester Specificレベルの訊ね方で回答してもらった.

【結果】
☆ Changes in learning strategies, learning orientations, mental learning models and perceived instructional activities, between the first and third semester
・ 1学期と3学期の対応のあるt検定(Table1)
・ Cognitive Processing:Memorising,Analysingは変わっていないが,RelatingやCritical Processingは伸びている
・ Regulation:Self-Regulationが伸びている
・ Learning Orientation:職業的な志向性が伸びている
・ Mental Learning Model:Intake of knowledgeが低下している
・ Contextualized Domain:概して,学習環境は時期とともによく認知されるようになる(Motivatingだけは例外).

★ Intercorrelations between the first and third semester concerning learning strategies
・ 1学期と3学期の同じ変数に関する相関(一種の再検査信頼性)がTable2に.
・ 理論的には安定しているはずのMental Learning Modelの平均的な相関が一番低い.

☆ Differences in the factor structure underlying the ILS scales after the first and third semester
・ 1学期と3学期それぞれに主成分分析(因子数4)・斜交オブリミン回転を行いその結果を比較.
・ 第1因子は両者ともMeaning Directed Learning Styleと名づけられるだろう
・ 第2因子は両者ともReproduction Directed Learningと名づけられるだろう
・ 第3因子は両者ともUndirected Learningと名づけられるだろう
・ 第4因子は解釈が難しい.3学期の方はApplication Directed Learning Styleといえるだろう.1学期の方はApplicationとMeaning Directedの混合と考えられる.
・ 全体的に,3学期になると方略・Orientationといった様々な領域の項目が相互に関係深く負荷しているという特徴がみられる
・ 因子間相関であるが,全体的に弱い.

【考察】
★Within-student developments in reported learning strategies
・ meaning-directedな学習方略の使用は大学教育を通じて増えている
・ reproduction-directedな学習方略は予想に反して使用が減っていない:大学教育を受ける前に,reproduction-directedな学習方略は発達しきってしまい,大学の時点では固定化している可能性(Schmeck, 1988).
・ 先行研究では,cross-sectionでは差が検出されないが,longitudinal analysisでは検出されることが多い:cross-sectionalな研究ではgeneration effectsが阻害要因になっているのであろう.

☆ Contextual and personological explanatory factors
・ 先行研究ではintake of knowledgeはmean-directedな学習方略と負の相関関係:本研究ではその割合が教育経験により減ることが判明⇒Learning OrientationやMental learning modelのようなものの変化が学習方略に影響を与えている可能性
・ 先行研究ではpersonal interestがmean-directedな学習方略正の相関関係:本研究ではその割合が教育経験により増大することが判明⇒同上
・ intake of knowledgeの減少はPerry(1970)の認識論的信念発達のモデルに合致.
・ interestの増大はMDLに合致.
・ Directingなど,教育環境の支援的側面に関する認知が増大する傾向:実際に学年があがるにつれてこのようなSupportiveな環境になっているのだろう⇒環境がよくなったことが,Adaptiveな学習方略が増えていることの要因である可能性.

☆ Consistency and variability of learning variables
・ 中程度の相関から,学生はある程度の一貫性を保ちながら(方略のrank orderを変えるほどではない)方略の使用を変容させていく,と考えることができる←やはり教育環境の変化が原因?
・ Vermunt(1998)のモデルでは,方略に比べてLearning OrientationやMental Learning Modelは特性的で一貫性が高いはずであった.しかしそれは支持されなかった:方略のセメスター間の相関が一番高かった→項目精選の必要性.

★ Educational Implications
・ 方略のAdaptiveな利用が増えるということは,教育的な配慮の余地を示したということで,教育的示唆に富むものであろう.
・ 脱落者が多いので,外的妥当性に関しては考慮しなくてはならない.failing studentsを除いた方が,学習方法(study approach)と授業の認知(course perception)の関係がクリアに出るという研究もある.

☆ Multidimensional development in student learning
・ 3学期より1学期の方が因子構造があまり明確に出なかった.
・ 学習方略とLearning orientation, mental learning modelの関係が3学期のほうが強まる:Development Hypothesis,MDLに合致.
・ 因子構造の変化はKlatter(1996)らの研究に合致する.それらの研究では時が経るにつれて,因子構造が拡散していく.これは今回の研究に合致し,Developmental Hypothesisに矛盾するものである:Context Variablesを重要視する必要性.
・ すなわち,Developmental Hypothesisはある側面では妥当であるが,Context Hypothesisも他の要因を説明するためには必要になってくる⇒教えはじめのときに,よりプロセス志向の指導をする必要性.

★ Future Research
・ 個人差にもう少し着目した分析.
・ 今回は2時点だったが,もう少し時点数を増やした上でクラスタ分析やSEMを使ったアプローチ(後者は現在行っている).


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